※当ブログの「漫画アシスタント」とは、在宅のデジタルアシスタントのことを意味します。
こんにちは、みけちくわ(@mike_chikuwa)です。
私は2018年から、漫画アシスタントのお仕事をさせていただいております。
「漫画アシスタントになろう」ブログ、第2記事目である今回は、「漫画アシスタントのお仕事で使う道具と、お仕事を得る方法、重宝されやすいスキル4種」についてです。
1つ1つについて分けて書くと知見の共有が遅くなるので、ある程度まとめて、さくさく行きたいと思います。
まず、初回の記事「「漫画アシスタントになろう」の想定読者」のふり返りを「軽く」いたします。
漫画アシスタントとは
漫画の原稿が完成にいたるまでの作業の一部(背景、効果線、トーン貼りなど)を行う、第三者の有償スタッフのこと。
で、私みけちくわと似たような条件
- 漫画家になる道を「諦めかけている」方
- 漫画家になる道を「諦めて」、他のお仕事をしている方
- 二次創作の活動で、イラストや漫画を描いたことのある方
- 漫画が好きで、一度でも「漫画のようなもの」を描いたことがある方
を持つ方は、漫画アシスタントに求められる気質がおありなので、漫画アシスタントのお仕事を始めるのはいかがですか?週1でも需要があります!と提言する記事カテゴリーを立ち上げました。
以上の内容をふまえまして、ブログ記事を更新しています。
2記事目となる今回は「漫画アシスタントのお仕事で使う道具と、お仕事を得る方法、重宝されやすいスキル4種」についてです。
漫画アシスタントの情報に明るくない方も対象にしていて、なるべくゼロベースからお話していくつもりでいるので(分からないところは質問してください。必要であれば記事に反映します)、ご存知のところは斜め読みしてください。
それでは、いってみましょう。
パソコン
当ブログの「漫画アシスタント」とは、在宅のデジタルアシスタントのことを意味するので、デジタル機器の用意は必須です。
パソコンは、ノート型パソコンよりもデスクトップ型パソコンを推奨します。
パソコンの処理速度は、実力に関係なくスマートカットできる部分だからです。
処理待ち時間というのはなかなか侮れません。イライラすることもないですし、万がいちフリーズして保存に失敗したら、これまでの作業が無駄になります。私はかつて、何回かやらかしました・・・。
パソコン選びについては、過去に書かせていただいた記事「「アシスタント背景美塾MAEDAX派」背景ゼミ・パソコン導入回を受けて、新パソコンを購入しました」をご参照ください。
こちらのスペックでも3DのLT変換中に処理待ち時間が数秒~2分程度発生することがありますので、複雑な3D素材をひんぱんに使用される方は、もう少しスペックを上げてもいいかもしれません。
私は目を閉じて、休む時間にしています。短い時間であれば、そういう使い方もできます。
ペンタブレット
漫画やイラストを制作するにあたって、「ペンタブレット(通称「板タブ」)を使うか、液晶タブレットを使うか」は悩むところだと思います。
個人的な考えとして、まずは、価格と品質を選べるペンタブレットで慣れていくと無理がないと思います。
ご購入の際は、本体サイズ(作業スペースとの兼ね合い)と、筆圧レベル(数字が大きい方が繊細に感知してくれます)に注目することがポイントです。
大きさと比例してお値段も高くなってくるので、ご予算とも相談しながら、じっくりご検討ください。
【安価版ペンタブレット】Intuos シリーズ
【高い筆圧検知をもつペンタブレット】Intuos Pro シリーズ
【重いが、持ち運びできるOS一体型液晶タブレット】MobileStudio Pro シリーズ
【液晶タブレット】Cintiq Pro シリーズ
私が現在使用しているのはこちらです。
個人的には、安価版のIntuosシリーズでも問題はないですし、Intuos Pro Smallサイズでも致命的な不都合はないかなと思います。
私はIntuos4 Smallからの買い替えで、なぜMediumサイズにしたのかというと、検討時はSmallサイズの筆圧レベルが8192ではなかったこと(2019年5月に筆圧レベル8192の製品が発売になりました)、デュアルディスプレイになるので描画範囲を広げたかったからです。
(繰り返しですが、筆圧レベル8192ならSmallサイズを選ぶ可能性は上がっていました)
twitterで見つけた知見として、「ペンタブレットは大きければ大きい方が良く、
液晶タブレットは解像度が開発当時の技術に左右されているため注意しよう」というツイートもありました。
どうしてペンタブはデカい方がいいかというと、小さいペンタブで正確な線を引くには画面を拡大しなければならず、そうすると全体像を見ながら絵を描くことができなくなるからです
— 稲守 竜砂 (@Inamori_Ryusa) January 8, 2020
板タブはデカい方がいいけど、液タブは20型以上のやつだと基本的にドット密度が16型以下のものより低く、モノクロ漫画の作業には向いてないから注意だぞい https://t.co/nAT0JZVON4
— 地雷ねこ (@minetabby) January 8, 2020
家電量販店(ビックカメラ等)や同人誌イベント(コミティア等)での企業ブースで試し描きできる機会もありますので、ペンタブレットや液晶タブレットにまったく触ったことがない方は、そこから体験なさっていくことをオススメします。
▼Amazonで探したい方はこちらから
CLIP STUDIO PAINT EX
「CLIP STUDIO PAINT」は、もはや必須となった、漫画のデジタル制作ソフトです。
漫画家さんも、アシスタントも、同じソフトを使用します。
「CLIP STUDIO PAINT」には、
「DEBUT(デビュー)」「PRO」「EX」と3種類ありますが、プロの現場で使うべきは「EX」です。ここは節約できないところです。
主な機能は公式サイトの「主な機能 | CLIP STUDIO PAINT」。
各機能の違いは、公式サイトの「機能一覧 | CLIP STUDIO PAINT」をご覧ください。
公式ガイドブックがセットになった商品もあります。
慣れてきた方は、こちらの時短本もどうぞ。
イヤホン、webマイク
音声での打ち合わせ時に使用します。
テキストチャットをメインの指示出しに使用する漫画家さんもいらっしゃいますが、音声通話の方が話が早い場合もでてくるため、あらかじめ準備をしておくとすぐに対応できて良いでしょう。
Skype、LINE、Discord、Dropbox等
打ち合わせや原稿データのやり取りに使用されることが多いサービスです。
Dropboxは無料でも2GB分利用でき、既ユーザーの紹介から登録すると、500MBのボーナス容量が手に入ります。周囲にユーザーの方がいるかどうか確認すると「お得」です。
道具がそろったら、まず、最低1枚は「本気度100%の完成原稿」を制作しましょう。
CLIP STUDIO PAINT EXの解説本を見ながらで良いです。
よくわからないことが出てきたら、ググって調べてみたり、技術を持っているお知り合いに質問したり、短期間型の漫画系教室に通ったりしてみましょう。
ちなみに、漫画アシスタントの技術を身につけるためにオススメの教室は「アシスタント背景美塾MAEDAX派」です。独学し続けることは時間がかかりすぎてもったいないので、ぜひ通ってみましょう。私もこちらの教室で学ばせていただき、今日があります。
漫画アシスタントのお仕事を得る方法
漫画アシスタントのお仕事を得る方法としておすすめなのは、Twitter、漫画系教室、漫画系オンラインサロンです。
求人する側や応募する側に共通して言えることですが、相手の情報をある程度知っている方が、自分との相性を判断しやすく、連絡をとりやすくなりますよね。Twitterで人柄や技術がわかるツイートを日頃からよくしておくことはとても大切です。
私個人の経験としては、「漫画系の教室」や「漫画系のオンラインサロン」で面識があるといったキッカケからご相談をいただき、お仕事をスタートすることが圧倒的に多いです。
漫画家さんや漫画関係者の方に出会える機会や場所はいろいろありますが、私がお世話になったところのみを挙げさせていただくと、下記になります。
雑誌等で漫画家さんが直接求人を出していて、自分が惹かれる作品を描く方である場合は問い合わせてみるのも手ですが、「漫画アシスタント求人掲示板」は、相手の情報(主に人柄や人あたりや誠実さ)が不透明な部分が多いため、私からはオススメできません。
私は求人掲示板を利用せずともお仕事できていますし、掲示板を利用した方からトラブルの事例を聞くことがあります。
まずは手軽に、Twitter検索をして、あなたが好感や尊敬の感情を持てる漫画家さんを探すとよいと思います。
Twitter検索「漫画 アシスタント募集」
実際に私が漫画アシスタントの仕事をどうやって得てきたかというお話は、「みけちくわ流・漫画アシスタントのお仕事GET術」に書きましたので、よろしければご参照ください。
漫画アシスタントの重宝されやすいスキル4種
私が漫画アシスタントのお仕事をさせていただいてきた中で感じた、漫画家さんから重宝されやすいスキルを4つ、ご紹介します。
漫画の原稿制作の方法は、時代により変化して(=選択肢が広がって)いますが、やり方は変わっても、制作工程が消滅することはありません。
現場によって求められる作業はさまざまですが、以下の4つのスキルはあらゆる現場に共通しているので、身につけておくと強いです。
- セリフのテキストを打つのが正確(かつ早い)【難易度:低】
- グレーの塗りつぶし作業が早い【難易度:低~中】
- 絵柄を合わせてモブキャラが描ける【難易度:高】
- オーダーされた背景が描ける【難易度:高】
①セリフのテキストを打つのが正確(かつ早い)【難易度:低】
会話なく展開していく漫画は、ほとんどありません。(サイレントで成立する漫画が全くないわけではありません)
「テキスト打ちが早くて正確!」という職人として、漫画家さんに向けて認知を広げてみるのも面白いと思います。
実際の漫画家さんの声
絵を描かない人にネタでクリスタ入りのPCを薦めたりしてた理由ですが、いま背景や仕上げじゃなくてDTP作業(ルビ打ちや英語セリフの流し込み)をしてくれる「絵を描かないアシスタントさん」が欲しいんですよね
— 地雷ねこ (@minetabby) November 13, 2018
クリスタ自体は月500円のサブスクリプションあるし、Kindleインディーズでの需要もあることだし テキスト・バッチ処理まわり重点で習得すれば在宅でできて時間もわりと自由で、都内のコンビニバイトよりは稼げる仕事にできるんじゃないかと(「稼げる仕事」って文字列入ると途端に胡散臭くなるな)
— 地雷ねこ (@minetabby) November 13, 2018
「稼げる仕事」の何が嘘かというと、私のほうから提供できる仕事は月30ページそこそこ=多くて1~2万円分というとこなので 小遣い以上の収入にするには他に客先を開拓する必要があるということですね…(そのつもりならご紹介はします)
— 地雷ねこ (@minetabby) November 13, 2018
>RT 「漫画のセリフ打ち」も実際にご依頼頂く内容のひとつで、現状、背景を描き進められる時間と引き換えなので、絵を描かないDTP作業アシスタントさんがいらっしゃると確かに助かります。
タイピングミスが無い(誤字脱字の確認作業がしっかりできる)方は、お小遣い稼ぎになるかと思います。— みけちくわ🐥🍀漫画背景、イラスト (@mike_chikuwa) November 13, 2018
プロットやネームを紙のみで創作なさって原稿化する段階でデジタルになる漫画家さんは結構いらっしゃると思うので、狙い目かも。
— みけちくわ🐥🍀漫画背景、イラスト (@mike_chikuwa) November 13, 2018
テキスト打ちは、絵が描けない方でも漫画制作に関われるお仕事です。逆を言うと、漫画家さんや絵を描けるアシスタントがテキスト作業を行うのは、時間の使い方としては正直もったいないのです。充分にありがたい戦力になりますので、ご興味をもたれましたら、ぜひご検討ください。
Twitter検索「アシスタント セリフ打ち」
②グレーの塗りつぶし作業が早い【難易度:低~中】
デジタルでの漫画制作では、スクリーントーンの部分をグレーで塗り、トーン化させることが一般的です。(トーンを表現として使用しない漫画もあります)
塗りつぶしの作業は、CLIP STUDIO PAINT EXの操作や、塗りつぶしの際に気を付けるポイント(はみ出しを綺麗に消すとか)を1度覚えてしまえば、あとはスピードなので、絵が描けない方でもできるお仕事になります。カラーの塗り分け作業のお仕事も同様にできることになりますね。
ただし、主要キャラのグレー不透明度の指定はあるけれど、モブキャラの髪や服などすべて指定された状態でお仕事を依頼されるとは限らないので、多少のバランス感覚をもつ必要は出てきます。モブキャラのトーン指定がなく任された場合は、登場するモブキャラ1体ずつサンプルとして塗って、漫画家さんのチェックを受けるとよいでしょう。
Twitter検索「アシスタント トーン作業」
③絵柄を合わせてモブキャラが描ける【難易度:高】
モブキャラを描くことも、アシスタントの仕事になる場合があります。
そのときに、明らかに漫画家さんのキャラクターと絵柄が異なると、読者の方が作品の世界に没入している感覚を冷ましてしまうことになります。
漫画アシスタントは任意の絵柄を再現できるアニメーターさんではないので(再現できるのであれば、アピールできるスキルになります!)、多少の絵柄差が生まれてしまうのは致し方ないですが、似せる努力をしていく必要はあります。そういった意味では、ご自身と絵柄の近い漫画家さんの職場を探すという視点もアリだと思います。
例として、私がモブキャラを描かせていただいた作品とページ数を挙げておきます。
『#BLごっこ』第3話6ページ目 授業中の生徒たち
④オーダーされた背景が描ける。【難易度:高】
背景の作画は、漫画アシスタントの代表的なお仕事といえるでしょう。
気力と時間と技術が最も必要な作業(モブキャラも多ければ大変)ですので、残念ながら「向き不向き」があり、「学べば誰にでもできる」というスキルではありません。
ですが、背景を描き入れることに「楽しさ」や「やりがい」を感じる方なら、適切な努力を重ねていけば、背景を描くお仕事ができるようになります。
小物ひとつとっても、設置面や角度やパースによって、キャラクターにしっくり合うかどうかが決まります。小物の他にも、乗り物、建物、食べ物、動物、自然物・・・たくさんあります。
もちろん私も、すべて得意なわけではありませんし、描いたことのない背景の方が多いです。
初めて描く背景をオーダーされた場合、まずは、時間をかけすぎない範囲で下書きを描いてみて、OKいただけるレベルかどうかを確認します。
リテイクとなっても、修正したらいける場合が充分ありますので、漫画家さんとよく打ち合わせをして、OKレベルを目指します。
こうして「取り組んだらできた」という自信を得て、2回目に描く時は余計な迷いがなくなり所要時間を少なくでき、徐々にレベルアップしていくわけです。
アシスタントの背景は、自分が描けるものをただ描くのではなく、漫画家さんのイメージをくみ取った背景を描くことが最大の使命で、このニュアンスの違いは重要です。技術だけでなく、アシスタントとしての心構えも身につけられると、継続的な依頼を受けることが可能となるでしょう。その両方にふれられる教室として、改めて「アシスタント背景美塾MAEDAX派」を紹介して、今回の記事はここまでにいたします。
次回、3記事目は「漫画アシスタントの一日(みけちくわ編)、アシスタント料金設定の考え方(※あくまで一例)」です。こちらもぜひご参照ください。
新たなご支援者様も募集しておりますので、よろしくお願いいたします。
CM:「漫画アシスタント」について知るきっかけになる本(注:HARDモード)